Airbnb Storyを半分読んだ感想:共有経済と起業の難しさを考える

Airbnb Storyという本を半分ほど読みました。Airbnbは世界最大の民泊予約サイトです。民泊という大きな共有経済を作りあげた三人の創業者の物語が、この一冊に収まっています。

この本は民泊に興味がある人や起業家だけでなく、会社とサービスを良くしたいと考えるすべてのビジネスマンにおすすめできます。ページが進むと、創業者物語というよりは、会社が会社を改善する通常のビジネス・ストーリーになっていくので、起業家は半分くらいを目安に読むといいでしょう。

大胆な主人公たち

主人公は三人です。

  • ブライアン・チェスキー
  • ジョー・ゲビア
  • ネイサン・ブレチャージク

ブレチャージクは技術者であり、チェスキーとゲビアはデザイナーです。Airbnbはチェスキーとゲビアが最初に創業し、途中からブレチャージクが加わりました。つまりもともとはデザイナーが起こした、一見最新テクノロジーと無縁の会社だったのです。

二人の創業は本書にあるように「伝説的」となっています。起業を目指していた二人は、仕事を辞めてからすぐに家賃の支払いに困ります。貯金がなかった二人は、住んでいたアパートを仕方なく第三者に貸して、なんとか家賃分の資金を作りました。そう、彼らが数兆円のビジネスを作りあげたきっかけは、「家賃が払えない」という二人の実体験がもとになっているのです。

家賃分の資金を「貸す」というビジネスで得た二人は、不思議な感覚をともないながら、民泊ビジネスをブレインストーミングし、クレイグスリストなどを使って宣伝していきます。彼らはブレチャージクを技術担当として仲間に入れますが、ブレチャージクは最後の最後まで二人のビジネスを信用できませんでした。実際、ブレチャージクは彼らのビジネスから出たり入ったりします。

三人の民泊ビジネスは苦難の連続で、最初から資金集めに苦労しました。そしてデザイナーの起業は当時のカリフォルニアから拒否されていました。チェスキーとゲビアはさまざまな投資家にコンタクトをとりましたが、メールの返信はほとんどなく、あっても否定的な意見でした。実はこの時のメールが公開されています。

7 Rejections Airbnb CEO ブライアン・チェスキーのブログから。

この本にもメールの内容が記載されています。こうした仕打ちにめげなかった彼らは、迷走した挙げ句にオバマ・オーというシリアル食品を作ります。オバマ・オーは大統領選に出馬していたオバマ大統領をモチーフとしていました。民泊という本業で稼げなかったので、奇抜なパッケージデザインで食品を売るという戦略に出たのです。

その後、ブレチャージクは未来がないと悟って二人のもとから去ります。残されたチェスキーとゲビアは知人のすすめでYコンビネーターに行き、ここが投資してもらえる最後のチャンスと覚悟を決めました。チェスキーとゲビアはブレチャージクを呼び、三人はYコンビネーターのポール・グレアムに会い、自分たちのビジネスをプレゼンします。

グレアムは厳しい評価を下しました。プレゼンが終わった後、ゲビアはオバマ・オーをグレアムに渡しました。本業と関係ない商品を見たグレアムは、三人がどこまでもタフであると気づきました。本業でうまくいかないので、その場しのぎにシリアルのパッケージを作り、借金を返す。このタフさにグレアムは感心し、Yコンビネーターに入れることにしました。

参考:「Airbnb Story」p57-58

起業の難しさ

本書の一章はすべての起業家が経験したことのあるエピソードが散らばっています。創業者の結束力が弱く、一人が抜けてしまうところは最も痛々しい場面です。Airbnbはチェスキーが目立っていますが、Airbnbのテクノロジーは実質ブレチャージクが担当しており、ブレチャージクがいなければサイトは存在しなかったと言えます。

ブレチャージクは二人に説得されて参加していたので、いつも二人よりも冷めた位置でビジネスを俯瞰していました。熱い二人と冷めた一人という創業者集団がどのように一つにまとまっていくか。本書はそのストーリーも丁寧に描いており、会社を起こしていく人たちに重要なヒントを与えています。

ここから起業の難しさについて考えたいと思います。

私は、大学院生だった時にビジネスコンテストに出ました。当時はそこで会った人たちと会社を作ろうと思いましたが、結局はそうなりませんでした。なぜ自分たちはチェスキーたちのように集まることができなかったか? このビジネスコンテストのストーリーはIrohabookで連載小説化する予定ですが、ビジネスコンテストに集まった集団が結束できなかった理由はとてもシンプルです。

  • ビジョンが明確に異なる
  • ライフスタイルが根本的に異なる

オバマ・オーをともに作っていたチェスキーとゲビアはおそらくビジョンも人生観もかなり近かったでしょう。住居を共にしていたこともプラスに働いていたことでしょう。一方、私たちはバラバラの価値観を持っていました。

多様な価値観を持っている集団は豊かなアイデアを生むでしょうか? 私はありえないと思っています。国も民族も多様であるべきですが、起業は多様であるべきでありません。必ず遅刻する人間と、遅刻をしたことのない人間がどうして偉大な結束力を発揮できるでしょうか?

得意分野の多様性はおそらくほとんど問題にならない。しかし価値観とライフスタイルが根本的に異なる集団が結果を生むことはない。

共有経済を考える

何を共有するか? これから共有経済の時代がやってくると言われていますが、共有経済で最も大きな市場、不動産という市場をAirbnbは支配しました。民泊という市場に並ぶ市場はコワーキングスペースと自動車です。民泊、コワーキングスペース、自動車の三つは動く額が大きいので、流通のマージンを得るサービスが成立します。

逆にこの三つ以外のサービスは存在できるでしょうか? 私は不可能だと思います。不可能と考える思考から隙間産業と大きな会社が生まれてくるので、ある意味で私の思考は起業家精神と真逆に行っています。

共有経済そのものは多くの産業ですでに熟成しています。例えば着物レンタル。着物は普段着ないわりに価格が高いので、共有したほうが安上がりになる。着物レンタルは「非日常」という価値が下支えする付加価値をうまく共有経済に転換したサービスです。概念そのものはAirbnbと似ています。

共有経済のサービスはおそらく個人の不満や気づきをもとにする必要がある。こんなものがあったらいいのに、という強い気持ちを誰かが持っている。しかし誰もそのサービスを実現していない。そうしたギャップにしか共有経済のサービスは存在しない。

共有経済の難しさ

本書のp81あたりでは「Airbnbは難しいビジネスだった」ことを説明しています。Airbnbはそもそも難しいビジネスでした。第一に規制がある。第二にネットワーク効果がなかなか生まれないこと。本書はそのどちらもピックアップしています。特に最初は、ネットワーク効果が生まれない難しさをあげています。

民泊と簡単に言っていますが、ネットワーク効果を生むための需要と供給、すなわち家を貸す人と借りる人を十分に確保するには、長い時間と三人の途方もない忍耐力を必要としました。

共有経済を作ろうとする会社はだいたいが規制とネットワーク効果と戦うことになります。行列のないラーメン屋はいつまでも客が入らない。客が一度入ってしまえば、もう一人、二人とやってくるのに。

参考

「Airbnb Story」, リー・ギャラガー著, 関三輪訳, 日経BP社, 2017

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